日本書紀の海鯽魚
日本書紀の神功皇后(じんぐうこうごう)のお話には「海鯽魚」が出てきます。
船上で食事をしていると船の周りに「海鯽魚」がたくさん集まったので、神功皇后が酒を注いだところ、酔った魚が口をパクパクさせて浮かび、海女さんが喜んだというお話です。
「海鯽魚」が出てきた直後に2回「鯽魚」と書かれていますが、「海鯽魚」は記紀で重複した表現なのですから、まずはこれが鯛の仲間であることは間違いないです。
ただ、赤いか黒いか、それが問題です。
このお話は福井県敦賀から山口県豊浦に向かって船で出た際の出来事で、色々な説はあありますが、おそらく若狭湾だと思います。
若狭湾はマダイもクロダイもかなり釣れています。
ただ水面に集まったということですし、日本書紀ではこれより1000年前のお話でも安易に「鯛」を使っていますから、マダイであれば堂々と「赤鯛」のようにしたでしょう。
したがって、この「海鯽魚」はクロダイだと思います。
瀬戸内海では海水の流れが急激になると浮袋が十分に機能しなくなってマダイが浮かぶという現象が起きるそうで、この現象と同じだとして船の周りに浮かんだのはマダイであり、場所を瀬戸内海だとする説があるようです。
ただ、この現象が起こる季節に食い違いがある上に、福井県から山口県という経路で一旦陸路を歩いてから船に乗るというのも考え難いことから、やはり若狭湾のクロダイと考えるのが自然でしょう。
マダイの方がドラマチックでしょうが、日本海で水面付近に来ることはないように思います。
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