SN 1181

鎭星(ちんせい)の色青赤で芒角(ぼうかく)有り

「鎭星の色青赤で芒角有り」という記述が吾妻鏡にあります。これはSN 1181として知られる養和元年(1181年)の超新星爆発のことで、「夜の八時頃に、彗星が東北に現れた。鎭星(土星)の色は青赤で、彗星の尾を引いている。1006年に出現して以来、その例は無い。」と書かれています。

この超新星は、カシオペア座とケフェウス座の間に約185日間輝いていたとされ、藤原定家の明月記にも「客星」として記録されています。「鎭星」は本来「土星」の意味なのですが、姿が土星に似た星ということなのでしょう。星の最期だとわかるはずもなく、彗星だと勘違いするのは仕方ありません。この超新星爆発は日本だけでなく中国にも観測記録が残っています。

こうした超新星爆発や彗星のような、突然空に現れて明るく輝いた後にやがて消える天体は「客星」と呼ばれていましたが、古い記録であってもそのほとんどは現代の天文観測によって同定されているそうです。ただ、このSN 1181についてはずっと未解明のままなのですが、2019年に発見された超新星爆発残骸が最有力で、解析結果が歴史書の記述と一致していると発表されました。

カシオペア座の方角の鮮やかな星雲で、中心に白色矮星が存在します。


超新星爆発残骸の多波長観測結果

(G. Ferrand and J.English, NASA/ Chandra/ WISE,ESA/ XMM,MDM/ R.Fessen, Pan-STARRS)


この超新星爆発残骸の研究結果は昨年発表されたのですが、その報告記事に上の綺麗な画像が載せられていました。この画像のような色彩が当時も見えていたのだとすれば、「青赤」とするのも当然です。


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