Punctata

《プンクタータ》

暗い海の中を、ゆったりと漂いながらも、どこかへ向かうように進むクラゲを描いた作品です。キノコのような愛らしい姿が、明るめの色彩で優雅に描かれ、静謐な海の中でひときわ存在感を放っています。その姿はまるで海を探索するかのようで、神秘的であると同時に、静かで力強い意志を感じさせます。

ナンヨウタコクラゲ(フィロリーザ・プンクタータ)

ナンヨウタコクラゲは、傘に散らばる白い斑点が特徴的な大型のクラゲで、多くの地域では体内に共生する藻類の影響で深い茶色をしています。傘の直径は30～50cmほどにもなり、ゼラチン質でできた体は水中をゆったりと漂います。8本の口腕でプランクトンなどを捕食します。

本来の生息域はインド洋から西太平洋の熱帯・亜熱帯海域ですが、近年、船舶のバラスト水に紛れ込んだポリプ（クラゲの幼生）が世界各地へと運ばれ、本来の生息域ではない温帯域にも分布を広げています。現在では、地中海、カリブ海、そしてアメリカの太平洋岸などでも確認されています。興味深いことに、メキシコ湾で見られるナンヨウタコクラゲは、藻類との共生関係を持たないため、茶色ではなく透明に近い色をしています。

この生息域の拡大は、時に大量発生を引き起こし、生態系への影響が懸念されています。大量発生時には、在来種の餌であるプランクトンを大量に消費し、生態系のバランスを崩してしまう可能性があります。また、漁網を詰まらせたり、発電所の取水口を塞いだりといった漁業や産業への被害も報告されています。

一方で、その優雅な姿と独特の美しさから、多くの人々を魅了しています。日本でも、クラゲの展示種類数が世界一を誇る加茂水族館をはじめ、いくつかの水族館でその姿を楽しむことができます。